所長メッセージ
年頭に当たりまして、2008年度及び今後の経済・経営環境の見通しを率直に申し上げます。先ず、本年は超高齢化高負担時代・経済縮小時代・国家財政破綻懸念時代という3つの企業存続リスクが同時に進行するブラックホール(閉塞)時代に突入し、まさに超長期に続く「超高齢化高負担と経済縮小との戦い」と「財政破綻リスク対策−備えあれば憂いなし」の年となります。キャッシュフロー経営実現への早期の決断・実施等の抜本的な改革ができない企業は生き残る事ができず、生き残った企業も半永久的に続く経済縮小(需要減少・利益減少)と戦い続ける事になると同時に国家財政破綻を想定した対策に着手すべき年と考えます。今年は、「経営転換の年」と強く認識し従来のシガラミを捨ててスピーディに決断・実施する必要があります。
■今後の経済・経営環境見通し
「超高齢化高負担と経済縮小との戦い」と「財政破綻リスク対策−備えあれば憂いなし」
- 海外売上の増加に伴う為替差益・金融収支差益等で大手企業は利益を出しているが、中堅・中小企業は原油・原料高による薄利高コストで超高齢化・半世紀で4000万人の人口減少に伴い経済縮小する国内市場のみを相手にしているので本格的な景気回復は今後共にあり得ない。
- 2007年7月の参議院議員選挙後、与党が大敗したため、国家財政破綻寸前にもかかわらず与野党が競って歳出を増やす方向に転換して国債新規発行増加となり、同時に目白押しの負担増加のメニューが実施される。
- 2009年は、消費税引上げ、パートの社会保険加入拡大、地方財政健全化法等が実施される事になり、景気は一気に下降局面に突入する可能性が高い。
- 第三セクター・地方公社等を含む財政指標の公表を義務付ける地方財政健全化法が施行され、銀行等は地方自治体に対して安易に地方債を引き受けたり融資する事が難しくなり、そうすると地方税収入が予算の約4割しかない地方自治体の多くが破綻に追い込まれる事になる。また、県・政令都市クラスの破綻が相次げば国家財政破綻の引き金になる可能性も高い。特に、建設工事業等は壊滅状態になる事も想定される。
- 国家財政破綻が起きた場合、混乱した状況下で売上・円資産大幅ダウン等により外貨で海外預金等の事前対策を怠っている多くの中堅・中小企業が行き詰まる。国家財政破綻の有無を信じる信じないは別として、備えあれば憂いなしである。
- アメリカの景気を心配する向きがあるが、アメリカは日本の最大輸出国であり日本の方が景気の影響度は深刻となる。
- 国と地方自治体の借金は平成18年3月末で1000兆円を超えており、仮に、日本がヨーロッパ地域にあったとしてもユーロの加盟基準(財政赤字比率がGDP比3%)を満たさずユーロに加盟できない財政状況にある。また、先進国中、唯一の格付けシングルAの国であるが、毎年、国債残高は増え続け財政悪化に歯止めがかからない。
- 中堅・中小企業の約7割は後継者がおらず借入金も完済できない状況で、特に2010年以降団塊世代の社長の大量引退に伴い会社は倒産・廃業、社長個人は破産というパターンが激増する。また、その頃には国家財政破綻が射程距離内に入ってくる。
- 政府は、国の公的年金支払を企業に肩代りさせるため、2006年に高年齢者等雇用安定法を改正し65歳までの雇用を義務付けたが、ほとんどの従業員が年金だけではとても生活できず65歳まで働くようになる。社員の超高齢化時代を迎え、人件費負担の増加・生産性の低下・過労死のリスク等が大幅に高まる。
- 厚生労働省の発表によると給付を抑えたとしても年金・医療・介護等の社会保障費は2006年度の89兆円から2011年105兆円、2015年116兆円となり、未加入企業が98,000社、社会保険加入企業168万7千社中10万6千社の滞納企業があり、現在、正常に納付できている企業の滞納が急増する。また、滞納企業の倒産等の有無に関係なく取締役等個人から滞納保険料を徴収する厚生年金給付特例法が施行され、同法は厚生年金基金にも適用される。
- 平成19年2月に厚生労働省が公表した「将来の年金受給見通し」によると、出生率1.56の高位で厚生年金減額40%、出生率1.26の中位で厚生年金減額55%、出生率1.06の低位で厚生年金減額68%となり、2005年の出生率は1.26で、子供の人口は26年連続で減少し続けているので出生率1.06に近くなる傾向にあり、そうなるとさらなる厚生年金の減額が行われる事になり「将来の年金」はこれに老後の生活を極度に依存しているほとんどの従業員にとって「最大のリスク」となる。
- 厚生年金基金は最大時1883基金から658基金に減少し、多少の運用益が出たとしても団塊世代の大量定年により受給者が急増し財務内容が悪化するので、巨額の不足金負担は基金残留企業にとって企業存亡の最大のリスクとなる。特に2008年以降、健康保険組合の破綻件数も増える。
- 中国のバブルがはじけても中国・アセアン地域(人口約20億人)等の需要はなくなる事はなく当面は成長していく。また、FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)が進展し経済的国境が段階的に消失するに伴い、ビジネスがより国際化する。
■具体的対策
上記に対して、経営トップの意識改革で下記の具体的対策を迅速にとる事が必要であると考えます。
基本方針:
- (1)
- 企業存続に必要なキャッシュフロー経営改善必要額を算出し、腹をくくって経営改善捻出対策を即スピーディに実施する。
- (2)
- リスクが少なく任せ切りにしない販売店開拓・委託生産等の国際化・海外展開を行う。
- (3)
- 自分の年齢と後継者の有無等を勘案し早期に現実的事業承継対策を実施して企業存続を確かなものにする。
- 利益の出ない得意先・製品等を整理・外注化するなど少人数でも利益が出せる体制にする。介護事業やフランチャイズには安易に参入しない。
- サービス業等は、パート等の社会保険未加入の追徴を回避する。また、60歳以上の高齢者の活用と人件費コストの大幅削減を行う。役員賞与や保証料支払い等により高齢役員の年金受給と社会保険料削減を実現する。
- 役員報酬を見直し、役員借入金・役員退職金等を活用する。役員数を削減し執行役員にして社会保険料削減や年金受給等で大幅な人件費削減をする。
- 受注は自社で行い製造(運輸を含む)等は設備投資している他社を活用する。設備投資リスクを他社に転化する。
- 国家財政破綻による超インフレ・金利引上げに備えて銀行借入金は急いで返済する必要はない。また、変動金利でなく固定金利にしておく。
- リスク対策として最新の就業規則・車両管理規定、安全衛生教育、誓約書、残業許可申請書、みなし労働時間協定、個人情報保護規程等を整備し、各社員の署名を貰っておく。また、サービス残業対策・過労死(1億円以上の損害賠償)対策等も実施する。
- 取引先からの回収不能に備えて取引基本契約等を締結する。未収は放置せず、内容証明、時効中断できる訴訟等をタイムリーかつ事務的に行い法的に短期間に回収する。
- 厚生年金基金は、不足金割当額がゼロ又は縮小している本年2月又は遅くても9月までに任意脱退する。また、適格年金や健康保険組合も早期にやめる。
- 65歳まで雇用義務付けに伴いリスクのない退職金制度に改定する等、就業規則等を見直す。401K等は安易に導入しない。
- 知的財産権(特許権・商標権・著作権等)にして独占権を確保しておく。粗利の高い独自商品・製品・技術等で差別化を徹底する。
- 日本の市場は先細りとなっていくが、自社製品・商品、日本にあって海外にないもの、日本で必要ないが海外で必要なもの等を国際商品ライフサイクル等を勘案して海外パートナー探し等を積極的に行う。
- 国家財政破綻対策として、海外預金口座開設をして緊急避難的送金先を確保しておく。
以上、該当項目がありましたら、ぜひ即実行される事をお勧め致します。本年もよろしくお願い致します。